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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1394 『頼朝・弐』(高梨康治/GENJI -神威奏乱-/PS3)

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ゲームリパブリックがおくるアクション・GENJIより、

高梨康治作曲、神威奏乱の『頼朝・弐』(仮称)。

頼朝との一騎打ちの中盤戦で流れます。

源平の争いを題材にしたGENJIの続編であり、PS3のローンチタイトルとして登場した本作。前作から3年後、平清盛を討った後も火種が絶えぬなか、平氏軍に人ならざる者が紛れ込んでいるとの噂を聞いた源義経は、強靭な肉体と力を授けるという魔瘴鋼をめぐる戦いに身を投じることになる。前作でもみられた活劇の如く華麗なアクションと、ファンタジー的な解釈で史実を脚色する作風は健在で、本作ではハードが移ってムービーを中心にグラフィックが向上した。操作キャラは義経と弁慶のみならず、新たに静御前と武尊が加わり、各方向キーに対応する形で4人を瞬時に交代できるようになった。各キャラは切替可能な2種類の武器を装備することができ、武器は敵を倒して入手する魔瘴鋼を使って強化したり進化させたりすることができる。前作にあった神威(見切り攻撃)は、本作では特殊空間下でタイミングよくボタンを入力するQTEに近い必殺技に変更された。カメラ視点が固定であるため、直感的に動かしづらかったり視界の外から襲われたりする視認性の難があるほか、全体的に魅せることに力点を置いている性質上、戦闘モーションやテンポは重めな傾向がある。総じて独特な和の雰囲気に浸れる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは高梨康治氏。音楽制作集団Team-MAXの主宰である作編曲家で、主にアニメの劇伴作曲で知られるなかでも特に和風のサウンドづくりに定評がある。GENJIシリーズには前作から引き続き携わっている。本作では前作同様、オーセンティックでダイナミックな和の楽曲が多く揃っていて、和太鼓や琴、尺八、掛け声などをふんだんに取り入れている。加えて弦楽器を軸としたオーケストラも巧みに組み合わせていて、存分に世界観に入り込ませてくれる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は前作の命名規則に則った便宜上の仮称とする。

頼朝との一騎打ちの中盤戦で流れるのがこの曲である。この戦闘は物語上重要な兄弟対決であるため、キャラの切替はなく義経が単独で戦うことになる。3連戦のなかの2戦目であり、直前のムービーから続けて流れることから、曲冒頭は台詞を聞かせる意図もあってか、間を重視した緊迫感のある空気が漂っている。5秒で神楽鈴が、8秒で掛け声が、14秒で太鼓のリズムが加わって徐々に熱気を帯びていく。22秒頃で再び掛け声が響くと、程なくして26秒から管楽器のメロディーが入り、作中でもすこし遅れてこのあたりで実際の戦闘に移る。管楽器の奏でる旋律は勇敢であると同時に哀傷を滲ませていて、40秒あたりからバイオリンが重ねられることでますます物悲しい響きが増す。54秒の鈴の音を合図に尺八が渋く風流な音色を紡ぎ出すと、オーケストラの演奏と絡み合って深く染み入るような印象をもたらす。しばらくはゆったりとした曲調が続くが、1分35秒から弦楽器が勢いづいて決戦らしい盛り上がりをみせる。また一旦落ち着いてから2分17秒からはコーラスの、2分30秒からは笛の見せ場がある。そうやって様々な音色に代わる代わる出番を与えることで、想いが交錯しながら一つの大きな流れを形作っていく様子を見事に表現している。辛くとも譲れぬ戦いを彩るにふさわしい一曲である。

この曲はエンディングでも使われていて、複数の楽曲が流れるなかでも一番最後に来るトリを務めていますね。1戦目、3戦目の曲もあわせてどうぞ。

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