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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1401 『ハテノサキ』(Cororo feat.Yuria Miyazono/ノスタルジア Op.3/AC)

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コナミがおくる音楽ゲームノスタルジアより、

Cororo作曲、Yuria Miyazono歌唱、Op.3の『ハテノサキ』。

物語の第五章「3つの旅路」の解禁曲。

ピアノを模した鍵盤デバイスが特徴のノスタルジアシリーズのナンバリング3作目にあたる本作。活力に満ちた赤の王国、雪に閉ざされた青の王国、砂上に浮かぶ黄の王国、3つの国でそれぞれ幼くして戴冠した王と女王は、やがて一つの運命に導かれて相まみえることになる。基本的なゲーム性は前作を踏襲しているが、ストーリーや世界観がメルヘンでビターな雰囲気に刷新された。システム面では、ベーシック演奏とリサイタル演奏(打鍵の強弱も加味したモード)を選べる点は前作と同様だが、前作では3曲続けて同じ演奏方法で遊ぶ方式だったのに対し、本作では1曲ごとに演奏方法を切り替えられるようになった。リサイタル演奏に関連して、前作では評価の一環に組み込まれていたテーマやホール選びは本作ではオミットされ、テンポ・ミスタッチ・音程の正確さ・優雅さの4軸で採点される形式に変更された。その他、楽曲の絞り込み機能の搭載やチュートリアルの拡充などの調整が施されている。引き続きピアノ独自の演奏感を堪能できる仕上がりとなっている。

本作では現時点までに500曲以上収録されている。うち新曲は200曲以上で、ノスタルジアオリジナルは50曲ほどである。オリジナル曲は特に本作の物語に関わる解禁曲が多い。コンセプトとしてピアノを軸としている点はこれまで通りだが、大まかに分けて活発な赤の王国に対応する曲はブラス系の情熱的なもの、寒冷な青の王国に対応する曲はシンセ系のクールなもの、綺羅びやかな黄の王国に対応する曲はエキゾチックだったり不穏だったりと独特な翳のあるものが揃っている。また、どの国にも属さない中央の地に対応する曲は幻想的な響きを帯びていて、複数のコンポーザーが様々な楽曲を提供しているなかでもCororo氏はこの中央に対応する曲を3曲書き下ろしている。Cororo氏はピアノを使った民族調を得意とするフリーランスの作編曲家で、ノスタルジアシリーズにはFORTEから参加している。サウンドトラックは4枚組で収録されている。

物語の第五章「3つの旅路」の解禁曲として2022年5月に追加されたのがこの曲である。繊細なピアノイントロから始まり、5秒あたりで溜息をつくような何気なさでコーラスが響くと、それに続いて8秒から本格的に唄が加わる。異国情緒あふれるアイルランド語の歌詞と日本語の歌詞を織り交ぜ、Yuria Miyazono氏が麗らかで神秘的な調子で巧みに歌い上げることで、本来は響きの異なる言語同士だが自然と融け合って格別な聴き心地を生む。28秒の「ああここは」と同時にティン・ホイッスルが甲高く鳴る点は圧巻で、続く「物語の果て」というボーカルフレーズを引き立たせてくれる。52秒のサビから再びホイッスルの見せ場があり、唄と伴奏のピアノと絡み合って心揺さぶる盛り上がりをみせる。全体的にケルト風味のボーカルソングとしての印象が強いなかでも、打弦楽器であるピアノ含め打楽器全般にも相応の存在感があり、特にサビ後半1分10秒以降になるとピアノの勢いとパーカッションの緻密さが極まる。曲終盤では余韻たっぷりにホイッスルを奏でた後、最後の最後はピアノの和音できっちり締める。譜面に関してはテヌート(帯が続く間だけ鍵盤を押さえる、いわゆるホールドノーツ)による拘束が多いが、比較的穏やかな配置である。

ホイッスルの突き抜けるような響きが素敵ですね。透明感のある歌声とピアノによく合います。